医療機関と連携し、24時間対応のオンライン診療や、救急往診サービスを運営する「Fast DOCTOR(ファストドクター)」を提供するファストドクター株式会社(以下、ファストドクター)。同社は医療機関からの診療費の請求代行に、GMOペイメントゲートウェイ株式会社(以下、GMO-PG)の総合オンライン決済サービス PGマルチペイメントサービスのクレジットカード決済を採用しています。
「生活者の不安と、医療者の負担をなくす」というミッションを掲げ、持続可能な医療の実現を目指す同社が、PGマルチペイメントサービスを導入した背景や成果、今後の展望について、Fast DOCTOR Technologies オンライン事業PMグループの渥美 建氏にお話を伺いました。(社名・役職等は2025年5月時点)
ファストドクターは、生活者・医療者の双方を支援する医療プラットフォーム「ファストドクター」を提供する企業です。「当社では、『生活者の不安と、医療者の負担をなくす』というミッションのもと、医療機関と連携の上で、様々な医療サービスを提供しています」と説明するのは、同社でオンライン診療領域のプロダクトマネージャーを務める渥美 建氏です。
「生活者向けサービスである『ファストドクター』は、24時間・全国対応の総合医療窓口サービスです。オンライン診療と救急往診の2種類の診療受付サービスを提供しており、インターネット環境さえあれば、いつでも、どこからでも診療を申し込めます(往診は11都道府県に対応)。
サービスごとに対応可能な診療科は異なりますが、僕が担当するオンライン診療では内科・発熱外来はもちろん、小児科やアレルギー科・皮膚科・心療内科/精神科などの幅広い診療科に対応しており、お子様から高齢者まで、幅広い年代の方にご利用いただいています。お陰様で、プラットフォームの利用件数は175万件(2024年9月末時点) を突破しました」(渥美氏)
ファストドクターは、スマートフォンやタブレットから必要な情報を入力し、画面の指示に従って申し込みを進めるだけで、簡単に利用できます。
診療内容によって手順が異なる場合もありますが、オンライン診療は基本的には以下のような流れで進みます。
※ 診療時には医師による診療前相談が実施され、オンライン診療の適用がない場合は地域の医療機関へ連携します。その際、診療費は発生しません。
支払い方法には、クレジットカード払いとコンビニ後払いの2種類が用意されており、どのサービスを利用した場合でも、その場で医療機関に診察料を支払う必要はありません。
さらにクレジットカード払いであれば、体調不良時にも外出することなく、診療から薬の受け取り、支払いまですべて自宅で完結できます。
ファストドクターはもともと救急往診を中心としたサービスを提供していました。2019年頃までは、往診した医師が現地で直接、診察料を現金で受け取っていたため、会計処理の負担が大きかったといいます。
「創業当時は往診に赴いた医師が患者様から直接現金で診察料をお受け取りするのが基本でしたが、体調が優れない患者様に現金をご用意していただく負担や、医師側にも診療報酬の計算から現金管理まで発生することが双方の課題となっていたのです。
こうした負担を減らす手段として、クレジットカードによるお支払いは有効な方法ではないかと考え、2019年夏頃に完全キャッシュレス化へと移行しました。
その後、2020年4月にコロナ禍で医療機関への来院が難しくなり、オンライン初診が突如解禁された際には、キャッシュレス体制を整えていたことが結果的に大きな効果を発揮しました」(渥美氏)
2025年現在は、オンライン診療・救急往診・メンタルクリニック・メディカルカウンセリングなど、ファストドクターの各サービスにおける患者様の支払い方法にクレジットカード決済を導入しています。
クレジットカードによる支払いの導入効果について、プロダクトマネージャーとして請求機能の実装に関する業務も担当している渥美氏は、「会計作業が格段に減り、業務効率がアップしました」とにこやかに語ります。
「当社はあくまで、提携医療機関の診療業務を支援する立場として、患者様からの診察料の決済手続きを代行しています。
キャッシュレス化以前は、振り込まれた金額と診察料が一致しないこともあり、その確認作業に多くの時間や手間がかかっていました。一方でクレジットカード決済は、システムさえ構築してしまえば自動化ができ、診療ごとに必要な作業はほとんどありません。
人手を介さずに会計作業を完了できるため、1件あたり20分〜30分ほどの時間短縮につながっています」
PGマルチペイメントサービスは、16万店舗以上 ※1 の加盟店様に導入されているオンライン決済代行サービスです。決済処理件数は68.9億件・決済処理金額は12.8兆円 ※2 と、国内随一の実績を誇ります。
「今では70%以上の患者様がクレジットカードでのお支払いを選択されています。支払い時の不具合などといったご意見を患者様から頂戴することもなく、非常に良い状態を維持できています」(渥美氏)
膨大な決済量を安定して処理しているPGマルチペイメントサービスのシステムは行政機関にも採用されており、99.999% ※3 という高い平均稼働率も強みの一つ。
「決済サービスの停止やシステムトラブルは、多くのお客様へご迷惑をおかけすることにつながりかねません。サービスの停止時間が極めて少ない安定的な稼働は、ファストドクター様のように緊急性が高いサービスを提供している事業者様にもご評価をいただいています。引き続き安心してご利用いただけるように努めてまいります」と、GMO-PGの営業 横山 大星はいいます。
クレジットカード決済による請求代行のメリットは、会計処理作業時間の短縮だけではありません。
「当社のように診療サービスを提供している企業や、医療機関ならではの課題解決にも役立っています」と渥美氏。
「オンライン診療や往診時の診察料は、一般的な病院と同様に、事前に確定していません。
そのため、当社ではスムーズな会計処理のために、あらかじめ支払い方法の登録を患者様にお願いしています。
クレジットカード決済の場合は、事前決済として一旦『仮売上』で金額を確保し、診療後に確定した金額に調整する仕組みで運用しています。こうした柔軟な対応が可能なのは、クレジットカード決済ならではの利点といえるのではないでしょうか」(渥美氏)
▼仮実運用イメージ
※1 GMO-PG・イプシロン、2025年3月末時点
※2 GMO-PG・イプシロン・PS、 2024年4月から2025年3月までの累計実績
※3 2022年1月1日~2024年12月31日までのクレジットカード実績平均。外部障害及びメンテナンスによる停止は除きます
ファストドクターは、2024年末にクレジットカードの接続方式をOpenAPIタイプへ変更しています。
PGマルチペイメントサービスのOpenAPIタイプとは、GMO-PGならではのAPI方式。
クレジットカードやPay払い系決済手段など23ブランドの決済手段に対応しています。
従来であれば、決済手段を追加するごとに増え続けるAPIを、決済手段を大きく4つにグルーピングし最適化することで、複雑さを最小限に抑えました。
あわせてグローバルスタンダードに準拠したWeb標準に従っているため、設計からつなぎこみまでの開発プロセスを効率化しています。
そのため、例えばクレジットカード決済をOpenAPIタイプで接続いただいた場合、同様のAPIで接続可能な他の決済手段の選択・導入が容易となります。
ファストドクターによる従来のプロトコルタイプからの切り替えは、基幹システムの更改に伴うものでした。
「『せっかく作り変えるのであれば、新しく使いやすいOpenAPIタイプにしよう』という話が社内で出たため、良い機会なので切り替えることにしました。
OpenAPIタイプはドキュメントが非常に充実しており、見るだけで使い方が分かるほか、実装も簡単でとても助かっています。
また、Webの標準形式に則っているためAPIに癖がなく、エンジニア目線から見ても非常に使いやすいですね。
現在、PGマルチペイメントサービスではクレジットカード決済のみ利用していますが、せっかくOpenAPIタイプにしたので、Pay系の決済手段など、支払い方法を充実させることも検討しています」(渥美氏)
渥美氏からの嬉しいコメントに、「OpenAPIタイプは、Pay系の決済をグルーピングしており、主要なサービスを一気に導入できることが便利なポイントです」とGMO-PGの営業 横山は続けます。
「OpenAPIタイプを通じて、クレジットカード以外にも様々な支払い方法を患者様にご提示することが可能になり、患者様の利便性向上に貢献できると考えています。また、渥美様の言葉通り、あらゆるWeb標準に従っているため、開発プロセスを効率化できることも大きな特徴の一つ。エンジニア目線でもOpenAPIタイプについてご評価いただき、大変嬉しく思っています」(GMO-PG 横山)
同社が提供しているサービスは、ファストドクターだけではありません。
在宅医療を行う医療機関を支援するための「オンコール代行サービス」や、行政・自治体における医療体制を支援する「夜間休日輪番体制支援」などの、医療者向けのサービスも多数手がけています。
多種多様な医療サービスを提供しているファストドクターですが、今後はどのような方向にサービスを展開していく予定なのでしょうか。
今後の展望について渥美氏に尋ねると、「やはり、オンライン診療を伸ばしていきたいですね」と力を込めます。
「広く知られている通り、日本では高齢化が進行しており、今後は医療ニーズのさらなる増加が見込まれます。また、その一方で、都市部への人口集中により、特に地方部を中心に医療へのアクセスに格差が生じていることも大きな課題の一つです。
こうした課題に対しては、ファストドクターのようなオンライン診療の活用によって、地域による医療アクセスの格差を解消し、『より多くの人が必要な時に診療を受けられる環境づくり』を行うことが必要なのではないでしょうか」(渥美氏)
地方部における医師不足の深刻化に対し、ファストドクターではすでに試験的な取り組みをいくつか実施しています。
2024年11月から2025年3月にかけては、地方独立行政法人 那覇市立病院と連携し、地域の夜間小児救急体制を整備する取り組みを実施。同院が抱える夜間小児救急の課題に対し、オンライン診療の導入によって地域医療の安定化を図りました。
このような取り組みを踏まえ、「最近はオンライン聴診器など、遠隔で患者様のバイタルデータを確認できるデバイスも少しずつ増えてきています。このような最新のデバイスやデータを活用しつつ、少しずつ標榜科を増やしていくことができればと考えています」と渥美氏は語ります。
また、オンライン診療では、医師側の事情に配慮した環境整備が可能な点も強みであるといいます。
「出産や育休明けの医師が職務復帰として、まずはパートタイムからオンライン診療に加わってくださるケースが多くなっています。オンライン診療体制の提供は、医師の働き方改革にも貢献している部分があるのではないでしょうか」と渥美氏。
「DXを推進したい」と考えているものの、具体的な方法に悩む医療機関も少なくありません。
最後に、DXに取り組みたい医療機関に向けたヒントについて渥美氏に伺いました。
「決済領域においては、すでに数多くのベストプラクティスが確立されています。また、それらのベストプラクティスを容易に実現できるサービスも複数存在します。
こうしたシステムを導入すれば、余分な労力をかけることなく、患者様・医療機関の双方にとって利便性の高い環境を実現できるのではないでしょうか。
医療DXを推進する上では、信頼性と安定性のある既存サービスを積極的に取り入れていくことが、今後ますます重要になると考えています。
特に、医療をはじめとした生活者向けサービスにおいては、『利便性』と『安全性』は欠かせない要素です。
PGマルチペイメントサービスは、その両者を兼ね備えたサービス。今後も利便性・安全性のさらなる向上に期待しています」(渥美氏)
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ファストドクター株式会社 日本最大級の医療支援プラットフォーム「Fast DOCTOR(ファストドクター)」を運営。「生活者の不安と医療者の負担をなくす」をミッションに掲げ、持続可能な医療の実現を目指す。生活者向けだけでなく、オンコール代行サービスなどの医療機関支援や、救急相談センター運用支援などの行政・自治体支援、企業連携・導入事業も展開。 |
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